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Oct 11, 2012

多文化演劇公演 『顔/ペルソナ』

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在日ブラジル人の一大コミュニティーを擁する岐阜県・可児市の文化施設aLa(アーラ)で、多文化演劇 『顔/ペルソナ』 の公演が10月7日に無事終了しました。5年目となる本公演の制作は約半年前から開始され、インタビューやワークショップを重ねて構成していくドキュメンタリーの手法を特徴としています。私が特定コミュニティーで作品制作に用いている手法を演劇で行っているわけで、そのプロセスは馴染み深いものでした。しかし、今回私はコラボレーターの一人として招かれており、参加者に密着したインタビューは構成・演出の田室寿見子氏が担当です。引き出された言葉はその多くがプライバシーに深く関わり、本人の社会的なポジションを示唆する繊細かつ切実なもので、それらを舞台上で本人自身に語らせるまで、田室氏は本人や家族との信頼関係構築に力を注いでいました。私は、田室氏の相手に深く入り込む根気と、すこぶる丁寧に言葉をあつかう姿勢に強い感銘を受けました。

私は全体の構成に絡むワークショップや補足のインタビュー等も行いましたが、メインの仕事は映像制作です。田室氏のインタビューから起こした気になるエピソードを拾い上げ、話者本人たちのアイディアも生かしながら作品適所に挿入される映像を制作しました。ブラジル人女性と日系男性の夫婦が30年前に初めて出会ったラブ・ストーリーをクラシックなスタイルで、また自己防御の手段として暗いキャラクターを創作し、クラスの中で演じ続ける中学生の心象風景。さらに、自分のセンスが他人と違うことを強く自覚し、「変な自分」になることを決意したブラジル人少女のエピソードなどを挿話のショート・ムービーとして制作しました。

舞台作品としての構成はドキュメンタリーの語りと映像、そしてダンスが重要な要素です。振り付け担当のじゅんじゅん氏は中学生も含む未経験者たちにかなり高いハードルを与えていたように見受けられましたが、それをまとめていく力量は見事だといわざるを得ません。舞台は私が最初に実施した顔写真を選ぶワークショップの再現から開幕しますが、これを照明バトンに吊ったライブカメラで背景に投影するアイディアも氏のものでした。これはエンディングにおける「人間福笑い」につながる伏線でもあり、スタッフ個々のアイディアが融合された好例だといえます。

このように異分野クリエーターとのコラボレーション・プロセスは楽しく、作品はオーディエンスにも必ずや楽しんで頂けたと自負しています。ただし、どんな事業にも例外なく、制作に関われば問題は多々顕在化してくるものです。例えば公演後スタッフ間で共有したのは、この事業が「多文化コミュニティーを形成すること」であるのか、「質の高い演劇作品を提供すること」なのか、どちらが本来の目的なのか?という点です。作品の質という点では、私の場合は映像という枠組みを個人領域化し、その中で私自身がクオリティーをコントロールすることも可能であったわけですが、舞台は総合的に評価されなければ意味がありません。毎回新しい素人の参加者を演者として迎え、しかも言語による理解もままならないケースも多いのですから、質の向上は容易ではありません。しかし、5年目になるこの公演が毎年工夫を凝らして確実に成長している事実は注目すべきです。過去を分析しつつ、次年度は原点に戻り、より相応しい形態に思い切って移行すべき時なのかもしれません。

02:57 PM




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